第9話でとんでもユフィ・・・



+++





外に出ると。
彼女はじっと空を見上げていた。
その様はいつかの朝会で見た彼女を彷彿とさせる横顔で。けれど記憶の中の彼女とは違ってあの頃から少し成長したそれは当時の幼さを残しながらもやはりどこか大人びていて。スザクに時の流れを感じさせた。
だがそんな彼女を前にしても浮かぶのはルルーシュのこと。
スザクはずっと近くに居たのにその頃のルルーシュの顔を、表情を思い出せない。わからない。
見ぬふりをしていたのだから当たり前なのだけれど、それでもどうしてもこうして後悔ばかりが押し寄せてしまう。同時に申し訳なさも。ルルーシュにも、・・・ユーフェミアにもだ。



「ユフィ」
「わかってるわ」
「・・・ごめん」
「いいの。どうせこうなる気がしてたし。一か八かって告白受けたのも私だしね。でも思っていたよりも楽しかったからいいわ。許してあげる」
そう口にした彼女は本当に気にしていないように、それこそ友達の恋愛事情でも聞くかのような楽し気な声でスザクに話しかけるものだからスザクは判断に困った。
普通に考えると気遣いか意地か、だろう。
こんな最悪の理由で振る(※本当に最悪だ)男にもやはり少しばかりの容赦は掛けてあげようとそんな涙の出るような優しい気遣いか、もしくは本音を見せることを恥と考えるプライドの高い人間独特の意地による見せかけの気遣いか、そのどちらかに集約される。
だがユーフェミアは基本的に振ったこともなければ振られたこともないはず。
それを元来気遣うのが苦手な彼女にこう言った種の気遣いが出来るものだろうか?優しくはあったけれど細かい所にまで気が回るような性質でなかったのをよく知っているスザクだからこそ、若干の疑問を禁じえずに。
「・・・本当に楽しかった?」
何を聞いている、そして聞いてどうするのだ。けれど聞かずにはいられなかった。
「えぇ、楽しかったわよ。あなた私の好みに近かったし」
彼女は何故そんなことを聞かれるのだろうと首を傾げるようにして、でもやはり楽し気な声で答えた。
「・・・その割にはОKもらうまで随分掛ったけど」
「それは仕方がないわね。理由が理由だし。それにあなたも悪いのよ?スザクは私のことなんて何にも見てなかったじゃない」
「・・・見てなかった?俺が?」
理由が理由って何のことだとも思うけれどそれよりも後者が気になった。
「そうよ?あなたが興味あったのは私の外見と作り笑顔だけでしょう?自分で気付いてなかったの?」



気付いてませんでした。



常々自分とは違う世界で生きているのだなと思うことはあったにせよ、それでもやはり女の勘だけは侮れないらしい、すべてお見通しとばかりに悪戯気に笑うユーフェミアを見てスザクが脱帽して全身の力を抜けばユーフェミアも破顔したように笑った。
何だかこの5年間の足掻きは何の意味もなかっただなんて結局誰に申し訳ないのだか。
間違いなくルルーシュだ、ごめんルルーシュ。



「・・・あれ?じゃあ、なんで大学に入ってОKしたの?」
緊張が解けると次に思いつくのはそんな疑問。
そこまでわかっていて尚且つスザクと付き合う理由がスザクには思いつかない。
不思議に思って問いかけてみればユーフェミアはうーんと悩んでは失恋だとか好みがとか一目惚れとか呟いている。何のこっちゃ。
なんだか考え込んでしまった彼女の横で困惑気にスザクが眉を寄せていると、
しばらく経ってからユーフェミアが唐突に顔を上げた。
どうやらようやく説明してくれる気になったらしい。



「理由は色々あるのよね。でもそうね・・・まずはあなたが変わったことが挙げられるかしら?」
「変わった?俺が?」
「変わったわ。高校の時はどこか冷たかったもの。大概はね。だから私最初は告白なんて受け入れる気はまったくなかったのよ?最初は、というか今でも半分くらいは冗談だと思ってるくらい」
何だかひどい言われようだ。
「でも2年の終わりくらいだったかしら?冷たさしか見えなかったあなたが段々と暖かさを持った目をするようになって。だからそんなあなたならもしかしたら私でもうまくいくかしらって思ったの。まぁ案の定うまくいかなかったけど」
「・・・ごめん」
「だから謝らないでって。私それでもそれなりに楽しかったのよ?あなたは結構面白い人だったし、それに今まで体験したことのなかった生活も経験できたしね。為にもなったわ。あなたには呆れられちゃったみたいだけど」
「あ、呆れたというか・・・可愛いとは思ったんだけど、その、」
「あの子と比べたんでしょ?」
「・・・えと、」
「わかるわ。確かに可愛い子なのよね。・・・盲点だったわ」
何か思うところでもあるのか、ぼそりと呟いたユーフェミアの後半はよく聞こえなかった。
かろうじて聞こえた盲点が何を示すのかはわからない。けど、
「君が好きだったのも本当なんだ・・・」
確かに勘違いをしていて結果的にルルーシュを好きになったスザクではあったけれど。
あの日にユーフェミアに惹かれたのも確かだった。
だからこそ今更言う資格などないことはわかっているのだけれど、それでも。
それだけは伝えたくて言葉にすればユーフェミアは目と口を軽く細めるようにしてスザクを見た。
「気持ちは受け取っておくわ。でもこれからはお友達になりましょう?きっと私たち、その方がうまくいくわ」
そうして口にされた申し出はこちらこそ願ってもないようなことで・・・
「・・・いいの?俺はそうなれたら嬉しいけど」
少しの躊躇を覚えながらもそう口に出せばユーフェミアは今までで一番嬉しそうに笑った。
「なれるわよ!きっと素敵な友達に!だからね?実は友達ついでにお願いがあるの」
「お願い?」
「その・・・さっきの子なんだけど、」
「ルルーシュ?」
「そうルルーシュ!ルルーシュなの!」
「・・・ルルーシュがどうかしたの?」
どうにも疾しいことがあった身としてはこの話題にはあまり触れられたくないのだがそんなことは彼女には関係ないようで。ルルーシュの名前を出した途端にユーフェミアの瞳が不穏なくらいにきらきらと光り出した。その自分と居た頃よりもよっぽどいい笑顔に。なんとなく嫌な予感がしてスザクは身構える。
けれど彼女から出た言葉はスザクの予想の斜め上をいった。



「お願い!ルルーシュを紹介して!」



「へ?」
ユーフェミアはそれはもう必死というぐらいにスザクにそう言うと、頭を下げ手を合わせる有名な懇願のポーズをした。
彼女には似合わないそれ。スザクはきょとんとする。
別に彼女が言ったお願いは大したことではないし叶えようと思えばいくらでも叶えられるので聞いてあげてもいいのだけれど・・・
ただ予想外のお願いではあったのだ。
だって、
「・・・店でルルーシュのこと呼んでたよね?ルルーシュと知り合いなんじゃないの?」



「まさか!とんでもない!」









+++



とんでもない?

・・・何が?



「今まで遠い存在だったからどうなのかしらって思っていたのだけど、スザクの恋人ならお近づきになりやすいわ!ね、いいでしょ?お願い!紹介してほしいの!あ、ついでにルルーシュはどんな子なの?話にしか聞いたことがなくて、でもずっと気になってたのよ。あ、でもあなたと5年間も付きあっていられるような子なのだからきっととてもいい子なのでしょう?あんなに可愛いのに性格までいいだなんて詐欺ね!」
「・・・いやに興味津々だね」
あれ?ちょっと待て?なんでスザクとルルーシュが5年も付き合ってたのを知ってるんだ?スザクは内心ちょっと冷や汗をかくが、下手に追及しても藪蛇になりかねないので口を噤む。
そんなスザクとはお構いなしにユーフェミアは本当に可愛い子だったわ、しかも聞いた話だと料理上手なのでしょう?手作り料理でしょ?美味しんでしょう?食べてみたいわ!あぁでも私如きがそんなことを言うのは不敬かしら!ね、どう思うスザク?とはしゃぐはしゃぐ。もしかすると自分といた時よりも元気なんじゃないだろうか?というくらいにその高いテンションにスザクも押され気味である、というか完全に守備一徹だ。
どうでもいいけど少しも落ち込んだ風がないのは演技か?気遣いか?いやだからユーフェミアに気遣いは(以下略)・・・切ない。
「・・・お嬢様のくせに」
「誰かさんのせいで随分と庶民にならされましたから。それにルルーシュはもっとお嬢様でしょう?」
ぼそりと呟いた言葉は遮られることなく届いてしまったらしい。
忘れていたけれど今現在自分は実に肩身の狭い身であったのだ。態度には気を付けなければと自分に言い聞かせるが、それを忘れさせていたのが当のユーフェミアであることについては黙っておくことにする。先の反省を活かした殊勝な心掛けである。



それにしても・・・



またまたお嬢様、だ。今日だけで何度その言葉を聞いただろうか。
いい加減聞き飽きた単語ではあるのだけれど、



・・・あれでも待てよ?



「ユフィってもしかしてルルーシュの家を知ってるの?」
ロイドも同じことを言ってたなと今更に思い出して、尚且つルルーシュを紹介してと言った彼女がどうしてそれは知っているのかとスザクが聞き返せばユーフェミアは先までのテンションを下げて(それに少しほっとする)不思議そうな顔をした。
「え?・・・知ってるも何も、」



だってあの子AHB財団のご息女でしょう?



「・・・はい?」



至極当たり前のように言われた言葉に、耳が、というより頭が拒否した。



「だからAHB財団。そのご息女。通称ルルーシュ殿下。・・・ルルーシュのことでしょ?」
「・・・ルルーシュが?」
「ルルーシュが」
「・・・AHB財団の?」
「AHB財団の」
「・・・アノ?」
「アノ。・・・知らないで付き合ってたの?枢木の息子なのに?」
ユフィは呆れた!とばかりに目を大きく見開いた。
「財界だけでなく政界でも有名じゃない!さっき一緒に居たのだって財団と懇意の仲のアスプルンド家の御曹司だし。ヴィ家とは特に仲が良くて確か彼女の異母兄の御学友で幼馴染だったはずよ?だからきっとルルーシュの事も小さい時から知ってるわね。ロイドさんに関しては私の実家で繋がりがあって私自身も挨拶をしたことあったけれどちゃんと話したのは今日が初めて・・・って聞いてる?」
ユーフェミアはスザクを気遣ってなのか止めなのか(明らかに後者だ)次々と説明を補足していくが、正直スザクはそれどころではなかった。



AHB財団。
知る人ぞ知る世界の財団。表立ってメディアに出てきたりはしないが間違いなく世界の上流社会を牛耳っているソレ。イコールつまり世界の首領だ。その気になれば一国を率いて戦争すら出来る財力と権力を持っているというのだから庶民には御々足すら拝めないような世界の人である。そしてその財団のトップであるその人こそシャルル・ジ・ブリタニア。財団としての顔こそ明かさないが、その莫大な財産の一部を使ってこじんまりと経営している(それでもその経常利益は世界でも十指に入る程)ルイツの名は世界でも知らない者がないほどに渡っており終いにはその独裁振りからついた渾名が皇帝陛下。更にそれらの会社関連はすべて彼らの子息女が担っていて。皇帝陛下に調子づいたメディアがその息子達にまでつけた渾名というのが皇帝陛下にちなんで皇子皇女殿下。
という何とも馬鹿げた本当にあった実際のお話・・・なのだが。



「その殿下がルル、ーシュ・・・」
「正確にはルルーシュ皇女殿下ですわね」
何故か黒の皇子の名で広まっていますが、そういってコロコロと笑うユーフェミアは昔であれば鈴の音を転がすように可愛らしく聞こえたのだろうが、今はただの悪魔の呟きにしか聞こえない。



道理で初めて会った時にどこかで聞いた名だなと思ったのだ。
性こそランペルージであったが、名前の方のルルーシュはそうそう無いような名前で(少なくともスザクは初めて聞いた)。尚且つスザクの実家は政治家なんてものをやっているためにそういう情報はある程度入ってくるのだ。
そうだ、確かルルーシュと出会う少し前に殿下が日本に来ていると父さんが。
その日は俺は大会で忙しかったからうっかりと聞き流していたんだけど、今思うとまさしくその殿下はルルーシュのことだったんじゃ・・・いや、絶対そうだ。
あー・・・、ロイドさんがあんなに楽しそうだったわけがようやくわかった。
「なんか俺、早死にするかも・・・」
「ご愁傷様ね。その頬とっても素敵よ」
「・・・・・・」



若かりし頃の自分よ、
一体彼女のどこが可憐な天使なのかと問いかけてやりたい・・・



スザクはちょっぴり虚しい気持ちを抱きながら淡い初恋が虚像だったことを悟ったのだった。










+++








「それで紹介はしてくれるわよね?」



まだ終わってなかったのか・・・



何だかこのままいけばまだまだ粘りそうなユーフェミアに新たな一面を知った心地になる。
あまり知りたくなかったが・・・いや、紹介は別にいいんだけどね?ただ・・・
「・・・それって、ルルーシュが財閥の娘だから仕事で利用出来るとかそういう、」
「まさか!そんなわけないじゃない!」
皆まで言わずとも伝わったらしい、ユーフェミアはとんでもないとでも言うように手を振って否定を示した。
・・・何だかさっきから妙に庶民派な振る舞いである。(※偏見)
「私あの家好きじゃないもの。いつか家を出ようと思ってるくらいなのよ?」
「・・・そうなの?」
あの家事能力でそれは無謀なんじゃ。という言葉は呑み込んだ。それよりも、
「じゃあなんでそんなにルルーシュに拘るの?」
「・・・そう言えば話の続きがまだだったわよね」
「うん?」
これははぐらかされてるのか?それとも最終的に理由に帰依するのだろうか?
急激な話の転換にイマイチついていけない。
「昔々あるところに御祖父さんと御祖母さんが」
「俺の戸惑い顔は無視ですかユフィさーん?しかもそこから遡るの?!」
「気遣いの出来ないユフィさんですから」
「わざとかよ?!って、え?本当に今までのわざとなの?!」
「あるパーティーに出席した時のことなんだけど」
「・・・もういいです」
自分の器の小ささを改めて実感する。
今までない程にルルーシュが恋しいよ・・・。




それでユーフェミアの話によるとこういうことらしい。




彼女の実家は日本でも知れた企業を営んでいるのだけど、そうなると当然その家の長女としてそれなりの仕事付き合いというものが生じる。子どもであってもそれは例外ではなくて。
スザクとて実家が似たようなものだからそれは多分に分かる。
否応もなく付き合わされてはあの無駄に金ばかりを取られて大して美味しくもない料理を消費させられる地獄の会合、というのは政治会だけだろうが兎にも角にも彼女も似たような境遇で。
父親にそのことを言われたときはまた退屈で退屈で仕方がないあの集まりに出なければならないのかといい加減うんざりとしていたらしい。それは大企業の一人娘であり、ユーフェミアがその恩恵に授かっている以上逃れようもないことなのだが。
けれどその日の会合だけは少し違ったのだ。



いつもとは違ってごくプライベートだけで行われた内輪パーティー。
ユーフェミアは仕事上特に(父親が)懇意にしているということで呼ばれたらしく、着いてみればそこにはとても和やかな雰囲気が流れていた。それこそ主催者の挨拶がたった一言で終わり(文字通り本当に「こんにちは」の一言だった)しかもそれが罷り通ってしまうくらいには大雑把なものであった。
だがいくら主催者側がそうであったとしてもゲスト側としてはさすがに挨拶をしないわけにもいかず。
ユーフェミアが父に連れられて主催者へと挨拶に向かった時である。



ふと視界に入ってくる人影、そこに彼女はいた。



主催者の後ろに隠れるわけでもなくひっそりと立っていた彼女。
特に何をしているわけでも目につく場所にいるわけでもないのにしかし、彼女はその圧倒的な美貌で他者を寄せ付けない程に目立っていた。
少女を初めて見たユーフェミアはそれはもう目を奪われた。
白く透き通る肌に、鴉の濡れ羽色の髪はどこまでもしっとりと美しく。
何よりもその顔の造形はユーフェミアの中で至上の出来とでも言えるほどに完璧なものであって。
中心に嵌めこまれた二つのアメシストは至高の輝きである。



ユーフェミアは初めて目にするそれに我も忘れて魅入っていた。



見れば見るほど美しく輝きを増すその少女。
ユーフェミアは頬が紅潮するほどの興奮と胸の高鳴りを覚えた。
奪われたのは目でなく心。
ユーフェミアは会ってから5分と経っていない、たった一瞬の間に、
見ず知らずの、名前も知らないその少女に恋をしてしまったのだ。



間違い無く一目惚れであった。



「一目惚れ・・・?」
「はい」
「・・・相手女の子だよね?」
「言ってなかった?実は私同性愛者なの」
「・・・・・・はい?」
さらりと聞かされた新事実にルルーシュの素性を聞かされた時とは比べようもないほどに頭が言葉の意味を拒否した。いや、拒否したままでいよう、その方が平和で
「だから女の子が好きなの」
「いや、二度言わなくていいからこんな時だけ気を利かせなくていいから」
ついでにさっきからさり気に止めを刺すのもやめてくれと。
半ば懇願に近い気持ちで思ったスザクはしかし、もうそろそろわかってきていた。
今までのお嬢様だからと、言い聞かせてきた所謂天然さは実はその大半が確信犯であることを。そして彼女がそれを楽しんでる(に違いないと俺の勘が告げている。ユーフェミアに比べたら随分と精度に欠ける勘である)ということが。正直見事に騙されていた自分を自分で憐れんでやりたい程の変貌ぶりに全身で詐欺だと叫んでやりたいくらいでもある。
「父に連れられていて挨拶もしなければいけなかったからその時は彼女に話しかけることはおろか姿すら見失ってしまって。ひどく残念、というよりも落ち込んだのを覚えているわ。お父様に聞いても知らないというだけだし。当時は彼女が表に出てくることはなかったから知らないのも無理はなかったのだけど」
「・・・でもそれを知ってるってことは彼女のことは見つかったんだろ?」
少し精神的ショックがまだ抜けていないために自然と口調はぶっきらぼうになってしまうがユーフェミアはそんなスザクに気分を害したでもなく憂鬱気に頬に手を当てて話を続ける。
「見つかったわよ。今でこそ引退、と言うのかしら?している彼女だけれど少し前までは割と有名だったしね。探すのは難しくなかったわ。だけどその頃には私と彼女とではあまりに距離が出来過ぎていて。もう近寄ることすら出来ない状態だったのよ。その上ある日忽然と姿を消してしまって、今度は探しても居所はおろか彼女に関する情報すべてがシャットダウン。驚きと悲しみと失恋でまた落ち込んだのに、まさかスザクのところにいるだなんて思いもしなかったわ。盲点ね。それに私も理由が理由でしょ?だからあまり公に出来ないし、スザクなら童顔で男くささがなかったからいけるかもって思ったのよね。実際に付き合ってみると面白かったけどやっぱり恋というよりも弟というか、」
「・・・って、ちょっと待て」
「うん?あ、やっぱり気に障った?そうよね仮にも付き合っておいて弟ってのは言い過ぎよね。でもこればかりは仕方無いのよね、性癖って。だから二股掛けてたことも謝らなくてもいいって言ったのにスザクがやたらと申し訳なさそうにするから私もなんか罪悪感が」
「いや、そうじゃなくて、そうじゃなくてね?」
確かにそっちも色々と聞き捨てのならないところはあるけれど!
でも今はそんなことじゃないんだ。
まさかもしかして、いや、そんな、あり得ないだろ?
「ユフィの言う彼女ってもしかして・・・、ていうかまさか?」
首を傾げて問えば。
「ルルーシュだったりして」
首を傾げて答えられた。
やっぱりか!
「ちょ、え、どういうこと?ユフィはじゃあルルーシュのことは大分前から知ってたってこと?俺とルルーシュが付き合ってたのはいつから知ってた?!むしろどこから知っててどこまで知ってて何を知らないの!?いやでもそこはいいよ後で詳しく聞くから。だから今聞きたいのはただ一つだ」
「何かしら?」



「君はルルーシュ狙い?」



返事はイエスorノーで。
詰め寄るように訊けば、



「イエスよ」



目も眩むような最高の笑顔で最悪の返事が返ってきた。
自分が3年掛けて口説き3年間付き合ってきた彼女は実は同性愛者でしかも今現在スザクの唯一無二の想い人であるルルーシュを狙っているんです、なんて・・・どんなコメディ映画にだってないだろう。何が友達だ完全に恋敵じゃないか、と心の中で魂の叫びを響かせるスザクは。
もはや初恋がどうとかというそれ以前の問題にがっくりと項垂れるしか出来なかった。



「これからも末長くよろしくね?スザク」
「できるか―――!!!」



昔っから少しも変わらない笑顔で握手を求めるユーフェミアにけれどスザクは全力で拒否を示したのであった。
涙目で。





あぁもう、たすけてルルーシュ・・・





今度ばかりは聞き入れられそうにない・・・








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