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「は?」
「間違ったことを許さないのはルルーシュの方だろ?」
「・・・へ?」
ルルーシュは俺がいつ?と不思議そうな顔をしている。
だからそうやって無防備に首を傾げないでほしい・・・
「君は・・・僕なんかよりよっぽど、過程を重んじてたじゃないか」
「・・・なんの話だ?」
「小さい頃の話」
「何故?」
「君が僕を誤解しているようだからわかりやすく最初から始めようと思って」
「誤解?」
「誤解だよ」
「誤解なんて、」
「してるよ」
「だから何がだ?」
もっとはっきり言え、とばかりにルルーシュが睨んでくる。
美人が怒ると恐いって聞いたけど、ルルーシュが僕に見せる顔は可愛い顔ばかりだな、と関係のないことを思う。
「まず第一に僕を正義感に溢れている人間と思っていることに。第二に僕が正しいことに重点を置いていると思っている点に。第三に、これはなんとなくの推測だけど・・・君がやたらめったらに僕を綺麗なものだと思っている点に。第四、そしてなによりも、僕の中の基準をルルーシュが勘違いしているのがそもそもの間違いだ。というかさっきまでルルーシュが言ってたことはほとんど間違いだ」
「・・・それのどこが間違いなんだ?」
心底不思議そうなその返事に僕は頭を抱えたくなった。
薄々感づいてはいたけれど、ルルーシュの中ではそれらが当たり前に根付いているようだ。
確かに今の僕はそう思われても仕方無い振舞いをしているけれど・・・それにしたってルルーシュは僕の幼少時代を知っているはずなのに。あんな性格と振舞いをしていた人間が、こんな真白な、人畜無害な人格に育つものか、そう思う。少なくとも僕はお綺麗な人間なんかじゃ決してないのだから。
「・・・小さい頃の僕って、結構わがままだったでしょ?」
「結構というかかなり」
「・・・」
「続けろ」
「・・・、だからルルーシュに憧れてたんだよ。僕はもう、ほとんど一目惚れも同然にルルーシュを好きになったからね。あの頃のルルーシュは(っていうか割と今もだとは思うんだけど)正義感が強くて、頭が良くて、プライドが高くて、間違ったことは許さない気高さがあって・・・同世代の子とは全然違うように見えた。事実全然違っていて、知れば知るほど、近づけば近づくほど君に惹かれていった。なのに片や僕の方はというと・・・初対面でいきなり暴力を振るうは、どう話しかければいいかわからなかったから、とりあえず怒らせるようなことをしてみたり・・・好きな子であればある程苛めてしまいたかったり。とにかくどうしようもない子どもで・・・」
「・・・そんなお前も割と気に入ってたけどな」
「ほんと!?ってあ、いや、そうじゃなくて・・・だからね、君に相応しい男になろうと思ったんだよ、って話」
「は?」
「君のために今の人格になったの。君に好きになってもらえるように、君の好みに少しでも近づけるように頑張った結果が今の僕なんだよ。だから僕は君が思っているような綺麗な存在なんかじゃまったくもってないし、正しいことに重点を置くのはルルーシュが当時それを重んじていたからで。つまり、僕の基準はいつだって君なんだよ」
君ふわふわ好きだし、とまでは言わない。そこまで意図していることがわかったら、今度は別の意味で勘違いをされてしまいそうだ。別に勘違いではないけれど。
「・・・意味がわからない」
「うん・・・実は僕も今、君の割と気に入ってる発言を聞いて思った。君に相応しくなろうと思って今の自分を心がけてきたけど、君が当時の僕を気に入っていたなら、もしかしなくても僕の努力に意味はなかったのかなぁ、なんて・・・はは。結局ナナリーとの結婚まで勧められちゃったしね・・・正直ほんとにどうしようかと思った」
「いや、それはその・・・。俺は、今のお前も、昔のお前も好き、だ。そもそもお前、本質は全然変わってないぞ?なんか大分変ったようには見えるけど」
「え!?そう!?結構頑張ったのに!?」
心外、じゃなくてそれは少しショックだ。いよいよ僕の努力が無に・・・
ん?ってことはルルーシュは、僕の性格云々よりも僕の本質を好んでくれているってこと?そうだとしたら・・・これほど嬉しいことはないのだけど。
思わずにやけてしまった僕を限りなく不審そうな眼で見るルルーシュ。
少し・・・傷つくよ、ルルーシュ・・・
「・・・物腰は柔らかくなったし、紳士なのかタラシなのかは少し迷うところだけど、穏やかにはなったがな、肝心なとこでは相変わらず自分主義だし、融通のきかない頑固者だし、天然馬鹿だし、空気読めないし、その癖俺のことだけは鋭かったりするし、正義感は元から強かったし、・・・馬鹿力も健在みたいだしな」
馬鹿力っていうのはきっとさっきの無理やりの件のことなんだろうけど、
それよりも・・・
「タラシ!?どこが!?」
一番の問題はそれだ。他にも色々問題はあったけれど、そこだけはどうも戴けない。
何が戴けないって、本命にそんなことを思われている事実がまずい。何故タラシなんてことになっているのかはわからないが、唯でさえルルーシュは自分を特別だと思う能力に欠けているというのに、そんな認識があったのでは今までの言葉さえも軽く受け取られかねない。いやむしろ既にそう受け取られているんじゃ・・・その可能性は大だ。
「誰にでも優しいところと、なんか言動が・・・」
「そっちの方が君が好きそうじゃないか!」
「なんだ、わざとだったのか?」
「え?何が?」
「俺に対する今までの数々の言動」
なんだやっぱりタラシだったのか、とルルーシュが聞き捨てのならないこと言う。
「そっちじゃないよ!そっちは全部本心だよ!そうじゃなくて誰にでも優しいの方!」
弱冠口説いたのもあるけど、結局ルルーシュには気付かれなかったから意味はなかったし。
それどころか、よもやそんなことを思われていただなんて。空回りもいいとこじゃないか。
「うぅ、あんまりだ・・・ルルの馬鹿・・・」
「誰が馬鹿だ。・・・お前、ほんとに何も変わってないな」
ルルーシュがくすりと笑う。そして一度笑うと余計に笑いが込み上げてきたのか更にくすくすと笑い始める。なんだろう、よくよく見るとルルーシュはなんだかすごく楽しそうだ。ご機嫌?
・・・それなら、
「・・・じゃ、じゃあ、君の好きな昔の俺の部分と、君が気に入ってる今の僕の融合体が現在の枢木スザクってことで・・・どう?なんかお買い得な気がしない?」
君の好きなところ尽くめ、さしずめ君専用お得な福袋といったところか。もうこうなったら理由なんてどうでもいいから君に買ってもらうしかない。機嫌の良い今に便乗する形で売り込んでみる。段々形振り構わなくなってきたな僕・・・
「はは!なんだよそれ!」
何かのツボに入ったのだろう、ルルーシュが心底楽しいというように大声を出して笑う。珍しいそれを目の前にして、僕はきょとんとする。
ルルーシュの大笑いなんて初めて見た気がする。ルルーシュはいつもどこか憂いた表情が多いから。そう思うと、なんだか、どうしようもなく幸せを感じた。細かいことなどどうでもいいのではないか、そう思えるような。ただルルーシュが幸せそうに、僕の隣りで笑ってくれるなら。それだけで・・・
僕は衝動のままに未だ笑いの冷めやらぬルルーシュを抱きしめて、お買い得でしょ?と睦言のように囁いた。きっと、幸せで幸せで仕方ないって表情をしているのだろう。だってほら、
「・・・ほんと馬鹿だよな、お前」
ルルーシュがこんなにも幸せそうに笑い返してくれるんだもの。
「ルルーシュ、馬鹿なの好きじゃない」
「どうだかな」
「・・・買ってくれないの?」
「ふふ、クーリングオフはつくのか?」
「ついてるけど、使わせないよ」
「へぇ、自信あるんだな」
「なんとなく、さっきの会話で色々と自信ついたからね」
「?たとえば?」
「ルルーシュが僕を大好きだってことがわかった」
「!・・・お前な、」
「間違ってないでしょ?」
「・・・勝手に言ってろ」
「ふふ、嬉しい」
「・・・やっぱり何も変わってないじゃないか」
「まぁまぁ、ルルーシュが好きな部分が残ってるってことだよ」
「実に嘆かわしいことだな」
「嬉しいくせに」
「馬鹿か・・・」
「ルルーシュ馬鹿だもの」
そういうとルルーシュは付き合いきれんとばかりに視線を彷徨わせてため息をついた。
その様が、どこか幸せそうに感じられるのは僕の自惚れ?
嬉しくなった僕は益々ルルーシュを抱きしめて幸福感を満喫する。
幸せってこういうこと?なんて、お決まりの台詞が浮かんで、
ずっとこうしていたいなぁなんてささやかな幸せに浸る。
だけど現実はいつでも邪魔をするのだ。
「・・・なぁ」
「ん?なぁに?」
「ご機嫌のところ悪いんだがな、」
「うん」
「なんか色々すごいことになってるぞ・・・」
「何が?」
「アレ」
「え?」
アレ?
そういえば・・・
僕ここで何してんだっけ?
「・・・すっかり忘れてた」
目の前には明らかに沸騰し過ぎてどこかの活火山のようになっている鍋。
いっそここまで気付かなかったのがすごいと思えるような爆発ぶりだ。
あとはひと煮立ちするだけでよかったのに・・・
鍋蓋が限界を訴えている。
やめてくれ、
もはや僕にはどうすることもできない。
「・・・どうするんだアレ」
「どうしようね・・・」
2人でもうどうしようもない料理を見つめながら、それでも次の瞬間には顔を見合わせて噴出していた。こんな惨状に気付かないほどに幸せな時間だったのかと思うと、些細な料理などどうでも良いような気がしてくる。これくらいいくらでも対価として支払ってやる。そんなことを思って、仕込みを入れて約3時間の大作を始末するために流しへと向かう。
「とある幸せな昼下がりのこと、かな?」
「?もう夜だろ?」
「まぁまぁ、お決まりのフレーズだから」
「変なやつだな」
不思議そうにしているルルーシュのその手を掴んで、今度こそ一緒に流しへと向かった。
いつまでも、こうしていられたらいい。
君がいて、僕がいて。
ずっと2人で。
幸せに・・・
君がいてくれればそれだけで
僕は幸せなのだ。
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結局騎士になったのならなかったのー??
なりました。
一応、騎士どころか恋人候補にまでなれちゃった編です。
“君がいない”と対で、前回の話と繋がっているのかいないのか・・・まぁ繋がっているとして、これは前回からどれくらい経っているのか。1ヵ月?3ヵ月?半年?でもとにかくルルさんはあれからずっとナナリーの騎士アピールを、スザクさんはずっとルルーシュの騎士アピールをしてきていて、今日一応の決着なのです。でもルルさんのことだからまた仕様の無いことを言ってはスザクさんを呆然とさせていそうです。そんなルルさんが好き。ってかデフォルトでルルさんがネコなことに何の疑問も抱かない2人。いや、こういうのはきっと雰囲気ですよ、うん。あと素質?(何の)。・・・いつかネコさんに不満なルルさんと何としてもルルさんを抱きたいスザクさんとの熱い攻防が書きたい。
※拍手から下ろしたので後日修正入れます。
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